菱岩について
ご挨拶
京都に独自の文化が育ってきた中、菱岩は天保初年(1829年)に仕出し屋(客席を持たずに、お客様のご注文を受けて料理を宅配するお店)として創業いたしました。以来200年近くの間、「お客様の喜び」を第一義として料理を作り続け、祇園街を中心に多くの方々に支えられながら、今日も商いを営んでおります。
菱岩では、文化や歴史背景を大切にした伝統的な京料理をおつくりすることが、当店を選んでいただくお客様の喜びにつながると考えております。時代とともにお客様の志向や食文化は変わってまいりますが、「京都らしいものが食べたい」「京都の文化に触れたい」というご要望がある際に、選んでいただける店であり続けたいと願っております。そのためにも、創業以来培ってきた京料理の技術に創意工夫を重ね、その時々に即した味・色彩・提供方法などの研鑽を日々続けることで、伝統を守るだけでなく発展・継承していく所存です。
最後になりますが、お客様にとっての大切なひとときに当店がお役に立てるのであれば甚だ幸せでございます。
こだわり
だし巻き、ご飯、そして色彩
当店の仕出し弁当には、伝統的な京都の味を「冷めても美味しく」「色彩華やかに」ご提供することに心を砕き作り上げてきた様々な料理が盛り込まれています。冷めた状態で提供するため、食材への味の含ませ方など気をつけなければいけない点は多岐にわたりますが、その中でもとりわけ、だし巻きと白いご飯にはより深いこだわりを持って接しております。
利尻の熟成昆布と店内で削った鰹節を用いて引いた一番だし、そこに2種類の卵をかけあわせてつくるだし巻きは、だしを逃すことなくそれでいて食べ進めるとだしが染み出るように、丁寧にじっくりと巻き上げています。
白いご飯は、固くならず口の中でお米がほどけていくように、お米の炊き上がり具合に合わせて力加減を調節しながら俵型に押しております。
また味や食感だけではなく、お弁当としての美しさにもこだわりを持っておつくりしております。お弁当は蓋を開ける瞬間の期待感にも醍醐味がございます。お弁当と対面した時、目にも美味しく料理が敷き詰められていれば、それだけで何か華やいだ気持ちになるのではないでしょうか。
だし巻きと白いご飯に加え、定番・旬の食材を用いた様々な料理を色鮮やかに散りばめ、ふんわりと盛りつけた当店のお弁当を、是非お召し上がりください。
歴史
京都の歴史が紡がれていく中で、菱岩の在り方も少しずつ変化してまいりました。
創業当時は、市場から買い付けた魚を天秤棒に担いでまわり、近くの町衆のところで受けた注文に合わせてお料理をお届けするというような、「ご近所様の御用聞き」として商売に励んでおりました。
やがて京都では、お祭りや慶弔時など特別な行事ごとがある際には、仕出し屋から料理を自宅にとどけてもらい、お客様をもてなすという文化が根付いていきます。特別な日の料理を仕出し屋が調えるという慣わしは、調理技術や表現方法を従来より高いレベルへ引きあげ、冷めても美味しく食べることができる料理の研究や、3代目主人松之助による名代の半月弁当の考案につながりました。
外食産業が充実しはじめた現当主の代以降、ご自宅への料理のお届けは少なくなってまいりましたが、新たに祇園街のお茶屋様への仕出し会席の提供を開始いたしました。店内で調えた料理を、冷たいものは冷たく温かいものは温かく提供するため、桐溜(調理した料理を入れるための木製の箱)を持って街中を駆け回る様子は、祇園の日常風景として皆様にご覧いただくことができます。
時代ごとに異なる点はありますが、「お客様の台所」という気持ちをもって料理をお届けするという心構えは創業以来変わることはありません。今後もお客様との新しい関わり方が生まれ、仕出しという文化が発展していくこともあるかと思います。それがどのような形であれ、お客様に喜んでいただける料理をこれからも作り続けたいと願っております。
アクセス
住所
〒605-0088京都市東山区新門前通大和大路東入西之町213
最寄り駅
京阪本線「三条駅」または「祇園四条駅」より徒歩7分